コラム
佐々木竹見・王者の眼差し

佐々木竹見 プロフィール写真

佐々木竹見(ささき たけみ)

元川崎競馬所属騎手。“鉄人”の愛称で知られる国内最多勝記録・7,153勝をあげた日本を代表する名手。
現在は地方競馬全国協会の参与として騎手候補生である後進の指導を行うほか、競馬のPRのために各地のイベントなどにも出演している。

平成29年度第8回開催 鎌倉記念 他

 10月9~13日の開催でメインとして行われたのは、南関東最初の2歳重賞・鎌倉記念です。勝ったのは大井のリコーワルサーで、鞍上は森泰斗騎手でした。 最終日に行われた2歳牝馬による小町特別は、山崎誠士騎手のピースフルジョイが直線馬場の真ん中を突き抜けてデビューから2連勝としました。また最終レースに行われた川崎市議会議員川崎区選挙区補欠選挙記念は、中団うしろを追走していたオランジェリーがゴール前で差し切りました。こちらも鞍上は山崎誠士騎手でした。 今回はこの3レースについて、佐々木竹見さんにうかがいました。(聞き手・構成/斎藤修)

2017年10月11日(水)鎌倉記念

優勝馬 リコーワルサー

斎藤
森泰斗騎手のリコーワルサーは7番人気。スタート後の直線は無理して行かず、中団よりうしろからの追走でした。
竹見
逃げたのは北海道のマッドドッグです。リコーワルサーはずいぶんとうしろから、馬込みの中に入れてのレースでした。
斎藤
3コーナー過ぎではいつの間にか先頭をとらえていました。
竹見
1~2コーナーでは徐々に外に持ち出していって、向正面中間から早めに動いて行っています。仕掛けるタイミングとしてはかなり早かったと思います。3コーナーで一気に前をとらえるときの脚が速かった。先頭だった真島騎手(マッドドッグ)の手が3~4コーナーで動き出しているのに対して、森騎手は4コーナーまで抑えたままでした。
斎藤
直線ではマッドドッグをあっという間に突き放しました。
竹見
これが直線の長い大井コースになれば、もう少し溜めて行って末脚を生かすレースをすれば、もっと強い競馬をするかもしれません。デビューから3戦目で北海道の馬を負かしたというのも、たいしたものです。これからまだまだ強くなると思います。

2017年10月13日(金)小町特別

優勝馬 ピースフルジョイ

斎藤
山崎騎手のピースフルジョイは、縦長の中団よりうしろからの追走でした。
竹見
山崎騎手は互角のスタートを切りましたが、すぐに抑えて、まったく慌てることなく後方で構えていました。行こうと思えば前に行けたと思いますが、終いの脚を生かすレースをしたと思います。
斎藤
3コーナーからは外を回して位置取りを上げてきました。
竹見
川崎コースでは、無理に内を突こうとすると、4コーナーで前が詰まることがあるので、末脚を生かすには外を通ってくるのがいいと思います。山崎騎手は自信を持って乗っていたと思います。直線での伸びが際立っていました。よほど素質がなければこういうレースはできません。牝馬としては相当強くなると思います。

2017年10月13日(金)川崎市議会議員川崎区選挙区補欠選挙記念

優勝馬 オランジェリー

斎藤
勝ったオランジェリーの山崎騎手はこのレースでも無理には行かず中団からの追走でした。
竹見
スタートして先行争いにもならず、すぐに抑える馬が多かったので、前半はかなりスローな流れでした。ただ向正面中間あたりから、やや掛かり気味に藤江騎手のバトルハルトマンが位置取りを上げていって、徐々にペースが上がりました。
斎藤
オランジェリーは、4コーナーでもまだ中団でした。
竹見
3コーナー過ぎでは行く馬を先に行かせて外に持ち出し、大外を通ってくる作戦だったと思います。終いの脚を生かすような馬は、内を突くより、外を回ってきたほうが、コーナーもスムーズに回れるし、持ち味を発揮できます。それにしても終いにこれだけの脚が使える馬だと、乗っている騎手にしてみれば気持ちいいです。これは山崎騎手の好騎乗だったと思います。