コラム
佐々木竹見・王者の眼差し

佐々木竹見 プロフィール写真

佐々木竹見(ささき たけみ)

元川崎競馬所属騎手。“鉄人”の愛称で知られる国内最多勝記録・7,153勝をあげた日本を代表する名手。
現在は地方競馬全国協会の参与として騎手候補生である後進の指導を行うほか、競馬のPRのために各地のイベントなどにも出演している。

令和2年度第2回開催 川崎マイラーズ 他

引き続き無観客開催となっている5月11~15日のメインとして行われたのは、川崎マイラーズ。直線抜け出したのは大井のグレンツェントで、鞍上は今年も全国リーディングトップ、船橋の森泰斗騎手でした。 12日の準メイン、杜若(かきつばた)特別は、浦和のカゼノウタに騎乗した酒井忍騎手が絶妙なペースに持ち込んで逃げ切りました。 15日のメイン、小田原市市制施行80周年記念は直線でガラリ一変の展開。馬群から抜け出したのは町田直希騎手のレインハートでした。 今回、佐々木竹見さんにうかがったこの3レース、勝ち馬は奇しくも3頭とも8番人気でした。(聞き手・構成/斎藤修)

2020年5月13日(水)川崎マイラーズ

優勝馬 グレンツェント

斎藤
サルサディオーネが逃げて、人気のカジノフォンテンは2番手。勝ったグレンツェントは中団の内につけました。
竹見
グレンツェントの森泰斗騎手はいい位置をキープしました。スタート後の直線では外から的場騎手(アンサンブルライフ)がラチ沿いを取りに来ました。的場騎手がよくやる作戦ですが、森騎手はそこで譲りませんでした。普通の騎手だったら下げてしまうところですが、下げてしまえば中団よりうしろの位置取りになって、もしかしたら勝てなかったかもしれません。このあたりはさすが森騎手です。
斎藤
グレンツェントは、4コーナーでは前4頭の外からとらえにかかって直線で抜け出しました。
竹見
大井に移籍してからなかなか勝てませんでしたが、もともと力はある馬で、今回は森騎手がうまく乗りました。
斎藤
連勝中で1番人気だったカジノフォンテンは5着でした。
竹見
カジノフォンテンの張田騎手は、逃げたサルサディオーネに競りかけていくのではなく、もう少し抑えてもよかったかもしれません。競りかけていったことで前の展開が速くなりました。ただここで強い相手とのレースを経験して、次は良くなってくるかもしれません。

2020年5月12日(火)杜若特別

優勝馬 カゼノウタ

斎藤
ここ2戦は好位追走で3着止まりだったカゼノウタが、今回は逃げました。
竹見
酒井騎手はスタートして出ムチも入れず、それほど追わずに楽に先頭に立ちました。これがひとつ勝因でした。
斎藤
向正面では後続を3、4馬身ほども離して単騎の逃げになりました。
竹見
2番手集団が固まって、そこから行く馬がいませんでした。人気のバトルチャンプがその集団にいたので、ほかの馬はそれを意識していたのかもしれません。3コーナーあたりから森騎手(キンジトー)と左海騎手(タマモカプチーノ)が追って行きましたが、カゼノウタはそのあたりでも息が入って、だいぶ楽でした。
斎藤
直線でも単独先頭でした。
竹見
ゴール前はさすがに一杯になって、後続に迫られましたが、そのまま押し切りました。酒井騎手の好騎乗でしょう。酒井騎手がいいのは、ルメール騎手など外国人ジョッキーのように、拳をぐっとクビに付けて乗るところ。肘を締めている姿勢もいい。追ってからも手綱がゆるまない。こういう騎乗は、若い騎手にも見習ってほしいです。

2020年5月15日(金)小田原市市制施行80周年記念

優勝馬 レインハート

斎藤
レインハートの町田騎手は、10番枠からスタートで内に切れ込んで行きました。
竹見
スタート後の直線はそうでもなかったですが、1コーナーから向正面にかけて、前の2頭が競り合ってペースが速くなりました。それを考えると、中団6番手はいい位置どりだったと思います。
斎藤
レインハートは4コーナー手前でもラチ沿いで、行き場をなくしそうになる場面がありました。
竹見
4コーナーでは先行勢の行き脚が鈍って前が壁になり、町田騎手はどこに行こうかという感じでしたが、直線に入ってその外に持ち出そうとしたところで矢野騎手(コアコンピタンス)に前をカットされるような形になりました。さらにうしろから1頭来ていて行き場をなくすところですが、よくあそこで外に出られました。持ち出してからの伸びが素晴らしかった。前のペースが速かったぶん、ゴール前で馬群ががらりと入れ替わって、展開に恵まれたところもありましたが、町田騎手もうまく乗りました。