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川崎競馬対談シリーズ (第10回、ゲスト:草野仁さん)

競馬をこよなく愛し各界で活躍されている方々に、川崎競馬副管理者との対談を通じて川崎競馬への期待やご意見を伺う機会を設けています。

第10回は「草野 仁」さんにお話を伺います。

[2014年1月4日 於 川崎競馬場]

川崎競馬対談シリーズ (第10回、ゲスト:草野仁さん)

草野 仁さんのプロフィール

1944年(昭和19年)、満州国新京市(現・中国吉林省長春市)出身、長崎育ち。

NHKに入社、スポーツキャスターとして、モントリオール五輪の実況中継やロサンゼルス五輪のスタジオ総合司会を務める。1985年にNHKを退社後は、フリーのテレビキャスターとなる。テレビ、ラジオ、映画、新聞、雑誌などでも活躍され、歌唱力にも定評がある。

現在出演中の番組に「世界ふしぎ発見!」(TBS系)、「主治医が見つかる診療所」(テレビ東京系)、「草野仁のGate J+(プラス)」(グリーンチャンネル)などがある。

著書に「話す力」(小学館新書)、「たかが競馬されど競馬」(大和出版)など多数。


競馬との出会い、きっかけ
川﨑: 本日は正月早々にお時間をいただきありがとうございます。テレビで大活躍、しかも馬主さんとしても知られている草野 仁さんをお迎えしてお話を伺ってまいります。まず、競馬との出会い、きっかけについてお伺いしたいと思います。
草野: 確か昭和41年、スポーツ紙を見ていたら「今年のダービーの売上 20億円へ」という見出しが目に留まりました。当時としても大変な金額で、「どうして人は競馬に惹かれるんだろう。これはちょっと見てみなくちゃな」ということがきっかけですかね。
川﨑: 実際、競馬場にも足を運ばれたのですか?
草野: そうです、中山競馬場に足を運びました。シェスキー、ウメノリュウといったオープン馬が出ていて、鍛え抜かれた馬体をパドック間近で見ていて、惚れ惚れとしたのを思い出します。イギリスで「キング・オブ・スポーツ」と呼ばれていたことは知っていたので、「競馬はなんて素晴らしいんだ!」と身震いし、直ぐに引き込まれていきました。
川﨑: そのときの情景が目に映るようです。
草野: もう少し馬を見てみたいなと思いましたが、JRAは土日しかやっていませんので、都心に近い大井や川崎に時間を見つけては競馬場に通いました。
川﨑: その頃からの地方競馬ファンでいらっしゃったのですね。川崎の印象や予想成績はいかがでしたか?
草野: 当時、川崎では後半5レースに、高い配当が出る6枠制の「枠単」が発売されていて、随分と楽しませていただきました。
川﨑: 当時は、他の公営競技でも、例えば前半は連勝複式だけ、後半からは連勝単式を加えるやり方をしていましたね。
草野: 昔は買い目毎に窓口が決まっていて、枠単で買う場合には、裏・表の目を、別々の窓口で並び直して買わなければ駄目だったんです。大概、場所が離れていて締め切り時間が迫っているときなどは、急いで、ず~と離れた場所まで駆け足で行って買いました。でも人気になっていると、人が殺到していて何回か買い損ないが出て、痛い思いをしたことがあります。(笑)
川﨑: 買えなかったときに限って当たる場合があるんですよね。(笑)
草野: ダービーにも出走した経験がある、タカサゴオーという馬がJRAから地方に転入してきて、人気は無いけれども周りの方が「これはいい馬だ」と言うんです。先行馬だったので3枠のこの馬から裏表流して買おうと決めたんですけど、どうしても要らないと思われる馬を一頭、外して買ったんです。
川﨑: で、どうなったのですか?
草野: 外した馬が2着に突っ込んで大万馬券、いゃ~思い切りやられてしまいました。(笑)「裏は押さえなくては」というのを勉強させられました。川崎は大きな当たり馬券を逃した記憶しかないです。(笑)
川﨑: 苦い思い出が多いですね。(笑)
草野: いつぞや友達と連れ立って川崎競馬場に来て、なけなしの5千円づつ計1万円を投資し、「儲かったら豪勢な食事にしよう」と2レース勝負に出ました。軸にした馬は良かったのですが、相手の馬がゴール前でかわされてしまったんです。そして、次のレースも結局、狙いが外れてしまいました。
川﨑: 豪華な食事どころではなくなりましたね。(笑)
草野: そうなんです。切なく、おそばになりました。(笑)
川崎競馬での想い出
草野: 川崎は何と言っても、アクセスがとても良いのが魅力的です。馬主としての想い出は、友人と一緒にサンシャインフォーエヴァーの産駒で、メイクマイデイという名前の仔を山崎尋美厩舎に預けたんです。
川﨑: メイクマイデイ、その名前の由来は・・・。
草野: ダーティハリーという映画の中で、主人公のクリント・イーストウッドが犯人を追い詰めてゴーアヘッド、メイクマイデイ(「Go ahead. Make my day.(やれよ。楽しませてくれ)」)という決め台詞から取ったんです。
川﨑: メイクマイデイは、どのくらい活躍したんですか?
草野: 6戦目で3歳オープンに勝ちましたが、その後、出走しては追走が続き、成績も一息でした。そうしたら、山崎師が「この馬は芝向きですよ」と指摘されたので美浦の勢司厩舎に入れたんです。中山で一度芝を使い、芝コース2戦目となる東京2000mを、ポンと出て2分1秒5の好タイムで勝ったんです。あぁ、やはり芝向きの馬だったんだなと、改めて山崎師の馬を見る目の確かさに敬服した次第です。
川﨑: 興味深い話ですね・・・。
草野: その後、その年の菊花賞に出走し、騎乗は小牧太騎手(当時、地方騎手/兵庫)に依頼しました。好位マークの戦法で臨み、途中は4番手で進み、直線もかなり手応えがありました。「これはもしかしたら」と思った残り300mのところから、GⅠに出る馬たちの物凄い脚、それはそれはすさまじいものがあり、結局6着に終わりました。
川﨑: 地方出身で菊花賞6着は大健闘ですね!
草野: そういうことがあって山崎師とはご縁ができ、その後もアルメイダという馬を預けて1勝しました。先生は人柄もすばらしい方で、競馬にも真剣に取り組んでいらっしゃるので、本当に安心して任せておりましたね。
川﨑: 山崎調教師は開業に当たり、海外で厩舎経営を学んでいますしね。
草野: その後、私の同僚が山崎師にプリサイスマシーンという馬を預けたのです。この馬は、川崎で5戦5勝して中央に転厩し、重賞戦線でも大活躍をしました。それから程なくして、息子の山崎誠士さんが騎手デビューを果たし応援しておりましたので、私としては、調教師・騎手ともに川崎競馬場は親近感のある競馬場のひとつです。
川﨑: 草野さん御自身で、セリやトレーニングセールに行かれて、そこで馬をご覧になって購入を決められるのですか?
草野: 中山で行われるブリーズアップセールには伺うようにしていますが、セリには一度も足を運んだ経験が無いんです。特に「ザ・ワイド」という番組を持っていたとき、これが月曜から金曜までの午後の放送帯だったので、北海道など遠くには行けなかったんですね。
川﨑: ではどうやってお決めになるのですか?
草野: 見ないでカタログだけで買っていましたけど、恐らく見ていたらあれもこれもと迷ったでしょうね。(笑)
草野仁さん
競馬の観戦ポイント
川﨑: 草野さんの競馬観戦ポイントはどのようなところでしょうか。例えば、パドックではどのようなところを主にご覧になられているのでしょうか?
草野: 競馬を始めた頃は、気合重視で、歩様もしっかり踏み込んだ馬をチェックしていました。それから段々と落ち着いていることが大前提となりました。チャカついている馬でも能力が高ければ走るのでしょうが、やはり心配です。今では、「落ち着きの中に気合がこもって力感あふれる馬」というのを基準にしています。
川﨑: チェックポイントの成果はいかがですか?
草野: ピッタシに勘が働いて、1着に来ることもありましたが、それでも十に一つの割合でしょうか(笑) 確率を上げれば、もっと良い結果を残せるんでしょうけど・・、やはり素人ですものね。
馬主になって良かったなと思うこと
川﨑: 馬主になって一番良かったなと思うときは、どのような時でしょうか?
草野: まず、自分の馬がレースに出走してくれるだけでも嬉しいものですが、事故なく元気で走って来てくれればと思います。その上で、上位に来てくれれば、もう言うことないなと・・。
川﨑: わが子を初めて運動会に送り出す親の気分ですね?
草野: そうです。馬主になってみて、馬の現実とか、馬のありようが良く分かるようになりました。実際に馬を預けてみると、馬がどの程度の健康状態であるのか、あるいは、病気をしていたり足に怪我を負っているのかが分かります。何の問題もなく、ちゃんとした状態で走り続けることのほうが少ないんだ、ということも理解できるようになりました。
川﨑: サラブレッドはデリケートな生き物ですからね。
草野: だから、元気でいて欲しいし、仮に怪我しても治るまで、じっくり待ってあげなければならないと思います。生命体としての馬を温かく見守ることが出来るようになったことが、馬主にならなければ分からないことでした。1頭、1頭の馬に愛情を持って接することが出来るようになりましたね。
川﨑: 馬そのものを包み込むと言ったところでしょうか?
草野: そうです、何があっても驚かなくなりますね。以前、一口馬主で関わっていたダンスインザダークが「皐月賞最有力」と思われていましたが、最終追い切りの際、熱発しレースに出走できなくなりました。本当に残念でしたけど、馬ってそういうことがあるんだなと思いました。
川﨑: 馬主さんとしては、口取りも気持ちが良いものでしょうね?
草野: 例え未勝利勝ちでも、500万円勝ちでも気分は同じで、実に誇らしい気持ちになります。
川﨑: 他の馬主さんから、「勝ち負けじゃない。例え負けが続いても馬主は止められないんだよ」って言われました。
草野: 生き物ですから、愛情を持って大事に接していかなければいけないんだなと思います。今では、私の所有馬は身体の一部になっている感じです。
川﨑: 馬に対する接し方で、少しお話しをしたいことがあるのですが、今朝、能力調教試験を一般公開で行ったのです。半数近い方が県外から参加され、また若い方からお年を召された方まで早朝から熱心に観戦していただいたのです。山崎調教師会長にお手伝いを頂いたのですが、質疑ではプロ顔負けの質問が沢山出てきました。
草野: 例えば・・・。
川﨑: 「ゲート入りの悪い馬をどのように矯正して、再試験に臨んでいるのか」とお尋ねになるのです。山崎師が「それは、人間と同じです。牝馬は叩いたり怒っては駄目。とにかく優しくなだめるようにゲート訓練を繰り返しやります。厳しくやると反抗して言うことを聞かなくなり逆効果になりますからね。反対に、牡馬は厳しく言い聞かせ決して甘やかしません。時には叩いたりすることもあります。ゲート内に食事を置き、お腹をすかせた状態で調教もします。すると、いつの間にかゲート内が怖いところではないことを身をもって覚えてきます。」と解説してくれました。私も話を聞くまでは、牡牝の区別など無く、同じ様に矯正するものだと考えていましたからね。
草野: 騎馬民族の国では、馬に対する愛情が底に流れていて、その接し方も割りと自然に出てくるのでしょうが、仕事の対象として馬を見た場合、いろいろな試行錯誤をしながら、何が一番、馬にとって気持ちの良いやり方かというのを身に付けていかれるのでしょうね。 
競馬実況でのこぼれ話
草野: ところで、競馬に携わっているといつも思い出すことがあるのですけど、ジャパンカップではラジオの国際放送で実況担当をしたのですが、アイルランドのスタネーラーの脚が腫れていて、「本当に走れるのか」と心配したものです。でも、日夜、厩務員さんがつきっきりで手当をされていて、見事優勝に導いたんです。優勝したこと自体も凄いなと思いましたが、馬に寄り添った厩務員さんの、馬に対する心からの愛情を感じ取ることが出来ました。いかに、自分の気持ちが馬に通じるようにしていくかが大事なんですね。
川﨑: ジャパンカップでは話題のジョンヘンリーがシューメーカーに騎乗し、その後、ストロベリーロードなんかも出てきましたよね・・・。
以前、草野さんの著書を読んでおりましたら、グリーングラス、テンポイント、トウショウボーイの3頭が闘った菊花賞も思い出の一戦だと書いておられたのを記憶していますが・・?
草野: そうです! NHK大阪放送局に勤務していたとき、初めて競馬のテレビ中継を担当した頃の話しです。先輩方が双眼鏡をのぞきながらラジオでやっているような実況をテレビでもやっていました。どうしても映像と実況がずれているのが分かるんですね。つまり、画面を見ずに双眼鏡をもって実況すると、流している映像と乖離するわけです。「これはテレビの実況のやり方ではないな」と思い、思い悩みながら、関西テレビの杉本清さんを訪ねることにしました。
川﨑: 競馬実況の第一人者ですね!
草野: そうです。杉本さんは、快く私を迎えてくださって、いろいろ手ほどきをしてくれたんです。杉本さんも苦労されたらしく、私が訪ねた二年前の秋の天皇賞(昭和48年)でタイテエムが優勝したとき、第3コーナーで雨の影響も有って同馬を見失い、それでも何とか実況を続けながら直線に入り大外を強襲したタイテエムが視野に収まったところで帳尻を合わせ、漸く放送を終えたものの、やり過ごした自分に引っかかるものがあったようです。
川﨑: そしたら・・・。
草野: 翌日、通勤の電車内で見知らぬ男性客から「杉本さん、昨日は見えていませんでしたね」(笑)と言われ、グサッと刺されたとのことです。(笑)
川﨑: その方もよくテレビを注意してご覧になっていましたね。
草野: 後で録画を見たら、タイテエムが向こう正面を過ぎてからインコースに入って、じりじり下がり追走するのは映っているんですが、第3コーナーから加速して第4コーナー手前で先頭集団近くまで上がっていくのがはっきり映っているのに、「自分は双眼鏡を覗いていて見失った、少し誤魔化しながらアナウンスをしてしまった。これじゃあ駄目だ、双眼鏡で追い続けて実況したのが間違いだ」と気が付かれたそうです。それで、テレビ実況では、映像ありきと言うことを念頭に置かれたそうです。
川﨑: どのように工夫されたのでしょう?
草野: まず、チームを作ったそうです。例えば、馬群が向こう正面に行ったら「では、先頭から見て行きましょう・・・」と例の調子になるんです。次に「人気の○○○は・・」となると、カメラがその馬を追うといったようになされたんです。そうしたチームワークをつくって2年足らずのところに、私が杉本さんを訪ねたという次第です。その時、「草野さん、あなたが迷うのは当たり前ですよ」と言われたのですが、後で納得することになるのです。
川﨑: 杉本さんも人知れず、そのような苦労話があったんですね。

草野: その翌年の菊花賞で、12番人気のグリーングラスが道悪の中一頭だけインコースを突いてきて、それにいち早く気付いてアナウンスをして、そのままゴールまでカメラが追ったので、自分としては、「まずまず上手くいったかな」とホッとしていたんです。近くにいた杉本さんに話を伺ったら、杉本さんはグリーングラスに気付くのが遅れたそうでした。「これはひょっとしたら先生に勝てたかもしれない」と思ったりもしました。(笑)
川﨑: 目に映るようです。
草野: でも、さすが杉本さんでした。後でVTRを見ると、テンポイント、トウショウボーイ、クライムカイザーの人気どころは、馬場の中央から外側のコースを取っていくんです。で、4コーナーを曲がったところで、「内に1頭グリーングラス」って、ちゃんと抑えていたんですね。だから、後で、グリーングラスが出てきたとしても、まったく違和感が無いんですね。いやぁ、流石だな~と思いましたよ。
川﨑: 聞かせる話ですね。
草野: 本当ですね。
想い出の競走馬
川﨑: 私は、その後の世代で競馬に触れることになるのですが、ダービー馬でいうと、オペックホース、バンブーアトラス、ミスターシービー、シンボリルドルフといったあたりです。
草野: どの馬も皆、強かったですね。
川﨑: 一番、心に残る馬はヒカリデュールです。地方競馬出身で、最後、春の天皇賞で故障を発生してしまうんですが、忘れられない1頭です。
草野: 実はこの馬に関して、少しエピソードがあります。昨年暮れ、都内で中山馬主会主催で有馬記念プレミアムレセプションパーティがあり、来賓で参議院議員の橋本聖子さんが「有馬記念と言えば30年位前にヒカリデュールという馬がいまして・・」と挨拶をされていました。
川﨑: そうなんですか!
草野: ヒカリデュールは、橋本さんのお父さん、善吉さんが所有されていた馬で、有馬記念で勝ったときは、私が放送をしていたんですよ!
川﨑: 何か深いご縁を感じますね。(笑)
草野: 主戦騎手は河内騎手でした。3コーナーから4コーナーにかけて、河内騎手が一生懸命にしごくんですけど、なかなか馬が進まないんです。思わず、それを見て、「ヒカリデュールが喘いでいる」と言ってしまったんですが、そしたら外を回って一気にダーっとゴールに向かって抜け出したんです。
川﨑: 凄い脚を使っていましたよね。
草野: 野平祐二さんにも解説をしていただいたのをよく覚えています。
川﨑: ヒカリデュールは、地方馬出身で、デビューは大井競馬場でした。その後、船橋や名古屋に転厩したりしていましたが、川崎競馬場でも出走していたんです!
ところで草野さんは、南関東以外、地方競馬はどのようなところに行かれたのでしょうか?
草野: そうですね、北からいくと、盛岡、水沢、上山、園田、姫路、佐賀など、時間を見つけては立ち寄りました。
川﨑: 10年前と比べても地方競馬の数も少なくなりました。荒尾、中津、益田、福山、北関東、新潟・・・。今では、ばんえい競馬を入れても14主催者です。ばんえい競馬は如何ですか?
草野: 一昨日、スカパーで川崎競馬を見ていると、ばんえい競馬も放送していましたので、ついテレビに見入っていました。結構、面白いもんですね。
川﨑: 本日も、ばんえい競馬を広域発売しています。お互い正月開催でやっているものですから、ばんえいとタイアップしているんですが、関東のお客さんにも結構人気です。矢野吉彦さんや目黒貴子さんらが駆けつけ、場立ち予想をされているんですね。
草野: 一昨日のレースでは39万円台(三連単393,080円 586番人気)の大穴が出ていましたよね。
川﨑: 場立ち予想された皆さんは、見事に外れていました。(笑) 
全国の競馬場の中でも、大井のふるさとコーナーを除けば、川崎競馬場は、他の競馬場の馬券を一番多く扱っている競馬場だと思います。
川崎競馬に対する意見、要望
川﨑: 今後の川崎競馬で、何かご意見とか、ご助言をいただけますでしょうか?
草野: 以前、欧米のテレビ局取材に行った際、時間を作って幾つか競馬場も見て回りました。特にイギリスのアスコット競馬場に行ったとき、来場者の8割がマイフェアレディの世界で、皆さんとても着飾って観戦されていました。「何をしているのかなぁ」と興味深く観察していますと、仲間同士で食事をしたり、お話しをしたりと、競馬場を社交場として利用されていたんです。
川﨑: 貴族のスポーツですものね。
草野: 私はというと、せっかくの競馬場に来たものですから、単勝が8倍近い馬券を1万円購入しようと窓口に行ったら、「あなた、何でこんなにたくさん馬券を買うのか」と驚かれてしまいました。(笑)
川﨑: どうして、驚かれたたんですか?
草野: つまり、イギリスの方にとっては、競馬場だからといって1万円単位で馬券を買う場所ではなくて、ここは、皆が寄り集まってお互いの情報交換や社交場として共有しているんだという意識だったんですね。
川﨑: なるほど・・・。
草野: ドッグレースにも2回くらい行きました。そうしたら、場内のお店に皆が集まって、ビールや食事をしながらずっと歓談しているんです。たまにレースを見ている感じです。私は、そういう体験から、「レース場はギャンブルだけを目的とした場所ではなく、気の合った者同士が集える心地よい場としてあってもよいのではないか」と思いました。
川﨑: とても大事な視点だと思いますよね。
草野: だから川崎競馬場でも、競馬の合間に一息入れるような休憩のスペースや、歓談できる場所があるといいなと思います。競馬を全体として楽しむための取組だと思いますね。以前、JRAの方にも話したことがあるのですが、「広大な敷地を持っているのだから、いろいろ許可や手続きが必要でしょうが、宿泊施設を作ってみてはどうか」と提案したことがあります。競馬を開催しているときだけでなく、敷地を有効に活用してみてはどうかなと思いますね。
川﨑: とても良いアイデアですね。私どもも、他の事業者の方とさまざまなコラボをやって、有効活用していきたいと考えているところです。実際、内馬場の芝生が、ゴルフ場の高度なメンテナンス技術を駆使して養生していますのでシートを敷いてゆっくりと観戦されたり、飲み物や食事を楽しんだりされています。加えて、3号スタンドを解体して、来夏には大型の商業施設がオープンする運びとなっています。できるだけ、自由な往来、相互乗り入れを目指しており憩いの空間が、そういう場でも提供できればいいなと思います。
草野: 競馬は競馬だけに特化しなくても良いと言うこと、大人の娯楽空間として存分に楽しんでいただければよいのではないでしょうか。
川﨑: 競馬のレース間隔が長いので、その時間を上手く使い、食事や映像など、来場者が退屈しないようにもって行くことも大切なことだと考えています。
草野: 食事も美味しいものが提供できれば、評判が評判を呼びますからね。
川﨑: それに、よく女性の方から、トイレの話が出てきます。そこで、昨秋、ウォシュレットタイプの洋式トイレを導入しました。今後、計画的に整備していきたいと考えています。
草野: 競馬場に来ることで、良い気分を味わうことが出来るということは大事なことです。是非、そうした取組をお願いしたいと思います。その際、単に、きれいにするだけじゃなく、数を増やしてあげるのも大事なことですよね。
川﨑: 有識者会議の委員になっていただいている鈴木淑子さんから、「コンシェルジュを強化しては」とのお話をいただきました。これは、初心者の方に馬券の買い方や施設案内を勧めるもので、女性を複数人、「動く案内所」として機能させようとするものです。こうした助言も参考にさせていただきたいなと思いました。
草野: 初心者向けの働きかけは大切ですよね。
対談の後のトークショーの模様(都築紗矢香キャスターと草野 仁さん)
対談の後のトークショーの模様(都築紗矢香キャスターと草野 仁さん)
川﨑: ゼミや友の会など、初心者をターゲットにしたイベントもやっていますが、お客さんの要望が多岐に渡りますので、いろいろ試行錯誤を繰り返しながら取り組んでいるところです。
草野: JRAもさまざまな努力を随分してきたと思います。以前は、職場で競馬新聞を広げるなんてことはタブーでしたよね。それが今なら、休憩時間であれば、別にいいだろうということになっています。ただ、一般の方から見ると、地方はJRAに比べるとワンランク下と見ている方がいるかと思います。だから、「競馬場はどこも同じだ」と言うことを分かっていただくことが大事なことです。
川﨑: そうですね。
草野: より美しく、よりきれいで、川崎競馬場に行けば、ちゃんと用事も済ませられる、JRAに引けを取らない競馬場として目指していくことも大切なことだと思います。
川﨑: それには、職員の意識改革が大事だと思っています。警察を退職されて再任用で従事される方が多いのですが、「ここはお客さま商売をやっていて、私たちは、ファンの馬券で生活させていただいている」という趣旨のことを何度も言い聞かせています。
草野: 「いらっしゃいませ」という言葉だけではなく、身体からそのような所作や行いが身に付いたものでないと駄目なんでしょうね。
川﨑: おっしゃるとおりだと思います。特に、JRAとの関係で言えば、交流競走などでも地方馬が、JRA馬と互角で勝負になるような形にしていかないと、ますます離されてしまいます。
草野: そうですね。でも、川崎も随分と頑張っていますよね。
川﨑: 暮れの大井競馬場で行われた東京2歳優駿牝馬競走で、川崎勢が上位1~3着独占しました。今後のクラシックが楽しみです。
草野: スターホースがいるのは大きいことだと思います。ロジータが活躍しましたけど、私も見に来たことがありますが、他にも良い馬が出ていますよね。
馬名の由来
川﨑: 少し前にユキチャンが関東オークスを勝ったとき、ユキチャンの縫いぐるみ人形が完売しました。来場者の中には、由紀子や美由紀など、同じ名前の女性が、ご主人や彼氏を連れて「自分と同じ馬をひと目見てみたい」と、初めて競馬場に来たという話もたくさん聞かされています。名前の付け方ひとつ取っても大事なんですね。
草野: ユニークな名前が川崎には多い、というのも話題づくりの一つですよね。JRAでも「オキテスグメシ」という名前が、ファン間で話題を呼んでいます。
川﨑: いろいろ調べていたら、馬名にはさまざまな制約がって、例えば「タケユタカ」という馬が登録されていたんですが、今は同じ名前の騎手がいるので駄目ですし、「ニバンテ」も実況で「先頭を走るニバンテ」ということで紛らわしいから駄目ということになっているようです。牡馬に「ガール」「レディ」はいけないけど、牝馬に「オトコマサリ」はOKという話もあるようです。草野さんは、どのようして馬名を付けられていらっしゃるのでしょう?
草野: 家内の名前が恵美子というものですから、「エミーズドリーム」という名前にした事もあります。結局、未勝利だったんですけど・・・。
障害にも出走したことのある「ランブリングローズ」、これはナット・キング・コールが歌いヒットし、その後映画にもなったタイトルにちなんだものです。私としては、いろいろ悩んでエネルギーを費やして考えてあげることが、馬への愛情かなと思っています。
川﨑: いろいろあるんですね。
草野: それに栗東の高野厩舎に預けてある「エスターブレ」という名前の馬がいるんですが、これはスペイン語で「安定している」、英語ではステーブルです。でも、低いところで安定しているんです・・(笑)
座右の銘
川﨑: 話も尽きないのですが、対談している方全員にお聞きしているのですが、草野さんの「座右の銘」を教えていただけますでしょうか?
草野: 「夢、実現」です。まず、夢を持って、次にその夢を実現するために、コツコツと積み重ねていくしかないと思っていますので・・・。自分の行動にも秘めながら大事にしている言葉です。
川﨑: 「夢、実現」、素敵な言葉ですね。それでは、今年、あるいは、今後の草野さんの夢というものをお聞かせ願いますか?
草野: スポーツの世界で、かつて活躍したスーパースター100人にインタビューしてみたいですね。当時を振り返って、何が良くて、どこが駄目だったのか、振り返っていただくもので、これをシリーズ化してBSあたりで流せたらいいなと思います。
川﨑: それは素晴らしいですね! 是非、実現して欲しいですね。馬主さんとしてはいかがですか?
草野: 一つでも勝ち星を積み重ねて特別レースを勝って欲しいなと思っています。先ほど話題に出たエスターブレ号が、オークストライアルのスイートピーステークス4着と健闘し、もしや期待を持っているのですが・・。
川﨑: 期待の1頭ですね。
草野: 調教師の話では、ともの肉がしっかり付いていけば、もう少し走りますよといってくれるのですが・・。気持ちよく口取りが出来ればよいなと思います。
川﨑: 一日も早くそのような日が訪れることを祈念しております。
草野: 実は私、川崎競馬馬主協会の会員でもあります。是非、川崎にも良い馬がいれば所有馬を預けてみたいと思います。
競馬ファンへのメッセージ
川﨑: それでは対談の最後になりますが、地方競馬、特に南関東や川崎競馬の多くのファンの皆さんに対して、草野さんから一言メッセージをお願いできますでしょうか?
草野: 川崎は何といってもアクセスが良いのと、ドリームビジョンも素晴らしいし、いろいろな改革によく取り組んでいる競馬場だと思います。ファンも着実に増えて来ているし、売上も好調だと伺っています。今後、「馬券を買わなくても良いから川崎競馬を覗いてみよう」とか、そうした環境を整えて下さると、ファンの方は必ず足を運ばれると思います。集客力を今以上に強いものにしていただくことで、素晴らしい競馬場を目指していって欲しいと願っています。
川﨑: 私たちも、是非、そのような方向で努力していきたいと思います。草野さんには、私どもの取り組み状況を見ていただくためにも、ちょくちょくご来場いただければと思います。
本日は、ご示唆に富んだ話し、沢山聞かせていただきました。有り難う御座いました。
草野: こちらこそ、ありがとうございました。
報知新聞提供
(報知新聞提供)

(了)

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